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撮影=足立涼

飯田美穂の作品販売がスタート。巨匠の名画を引用し、記憶の追体験と新たな視点を生み出す対話の絵画

OIL by 美術手帖がおすすめのアーティストを紹介していく「OIL SELECTION」。今回は、飯田美穂です。制作当初から継続して描き続ける、名画の引用から新たにイメージを展開させるシリーズから、OIL by 美術手帖では新作を出品いたします。

文・構成=髙内絵理(OIL by 美術手帖)

飯田美穂のアトリエ 撮影=足立涼

 飯田美穂は、絵画の巨匠たちの名画を引用し、イメージを抽象化させて展開する作品を発表しています。名画の引用は、レオナルド・ダ・ヴィンチの《モナ・リザ》(1503-19頃)から始まったと言います。自身の制作の方向性を固めていく際に、自分のなかの世界観を画面に表現したり、抽象画を描いてみたものの、どこか一方向的な感覚があり続かなかったと振り返ります。対話という側面から絵画を考えた飯田は、人はコミュニケーションをとるときに、自分の思い描いたイメ―ジと完全に同じものを相手と共有することは不可能だが、例えば《モナ・リザ》はそれを可能にすることができるかもしれないと感じたと言います。名画のように、頭のなかに誰しもが同じイメージを思い描ける絵画という表現は奇跡に近いことです。「絵画」そのものを自分の表現として描いたら、記憶の追体験から鑑賞者とイメージを共有、または新たな視点が生まれるかもしれないと着想し、名画を引用して描く方法をとります。

 また、彼女の表現はイメージの簡略化が特徴的です。とくに点で描かれた顔のパーツの表現は飯田の代名詞ともいえます。飯田は幼少期より習っていた書道の影響もあり、「線」を重ねて絵画を構成しています。そのため、「点」も短い「線」として表現されています。人間の顔は、読み取る人にとっての情報量が多いため、鑑賞者の視点はどうしても顔に集まってしまう。表情をつけず簡略化して表現することで、顔から視線を逸らし、ブラッシュストロークなどに現れる「線」に視点を向かわせています。

 今回は、フェルメールとヤン・ファン・エイクへのオマージュから生み出される作品を発表します。鑑賞者は飯田の絵画と名画のイメージの記憶とを重ね合わせることで、新たな視点を見つけてみてください。

 

 

《image, Jan van Eyck》(2023)

 

《image, Jan van Eyck》(2023)

 

《image, Jan van Eyck》(2023)

 

《image, Vermeer》(2023)

 

 

 

 

プロフィール

1991年愛知県生まれ。2018年京都造形芸術大学大学院芸術専攻芸術研究科ペインティング領域油画コース修了。愛知県在住。絵画への愛とオールド・マスターたちへのリスペクトを込めて多様な名画を引用し、抽象化されたイメージを描く。主な個展に、「±image∓」(京都岡崎蔦屋書店 GALLERY EN ウォール、2022)、「I66I」(YEBISU ART LABO GALLERY、愛知、2021)、「□(1x1/2x2), they-1」(FINCH ARTS、京都、2020)、「目の絵 I menuet」(FINCH ARTS、京都、2019)、「トーキョーワンダーウォール都庁2014 —飯田美穂—」(東京都庁、2015)、グループ展に、「Welcome to the Painting Jungle」(biscuit gallery、東京、2021)、「DELTA Experiment」(TEZUKAYAMA GALLERY、大阪、2020)、「ファン・デ・ナゴヤ美術展2020『ここに在るということ』」(名古屋市民ギャラリー矢田、愛知)、「ARTISTS'FAIR KYOTO 2019」(京都文化博物館別館)、「ART in PARK HOTEL TOKYO 2019」(パークホテル東京)など。

 

Information

飯田美穂、TYM344、パク・ジヘ 3人展 「Aliens 3」

会期:2023年2月24日~3月12日
会場:FINCH ARTS
住所:京都府京都市左京区浄土寺馬場町1-3
開館時間:13:00〜19:00
開催日:会期中の金土日
料金:無料

撮影=足立涼

撮影=足立涼