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岩崎奏波の作品販売がスタート。絵画空間の可能性を追求し、真実を問う物語を絵画に

OIL by 美術手帖がおすすめのアーティストを紹介していく「OIL SELECTION」。今回は、岩崎奏波です。継続して描き続けている、独自の態様をした生物を柔らかな色彩で描くシリーズから、新作を出品いたします。

文・構成=髙内絵理(OIL by 美術手帖)

アトリエでの岩崎奏波

 岩崎奏波は、独自の態様をした生物を柔らかな色彩で描く作品を発表しています。一見、現実世界で目にする動物のようですが、よく見ると足が7本だったり、頭が3つ首から生えている生物が、岩崎の絵画ではリアリティを持って描かれています。また、フラットにモチーフを配置した画面は不自然さや違和感が強調され、不自然だが絵画のなかでは成立している空間と、現実と、どちらの空間も存在していることを鑑賞者は意識します。

 現在の作風が生まれたきっかけには、多摩美術大学の大学院のときに受講したアピチャッポン・ウィーラセタクンによるワークショップがあります。岩崎が感じていた「不可解な世界だけれども、そこに流れている時間のなかを心地よくさまよい続ける」表現をする彼のワークショップは、とても開放的で衝撃を受けたと話します。朝、集合すると瞑想から始まり、その後の公園でのフィールドワークでは、そのとき聴こえた音など、そこで受け取った感覚をもとにディスカッション。その感覚から引き出したキーワードから付けた作品タイトルをもとに制作をしたり、初対面の相手との対話から着想して制作を行うなど、「他者との会話」を大事にするワークショップから、岩崎は他者の記憶や時間が自分の作品に反映される感覚を味わいます。幼少期より物語を空想することが好きで、それまでの制作では「自分自身に閉じた表現になってしまうことが多かった」彼女は、これをきっかけに他者の記憶や時間を取り入れて、鑑賞者へ働きかけるような表現を意識するようになりました。

 岩崎にとって絵画は「自由な空間」で、「絵画というゲームのなかではどんなルールも許されるように感じる」と言います。一見、不可思議に見える生物も、その態様が「通常」であるように見え、それも真実かもしれないと感じさせることができる絵画。他者とのコミュミニケーションから着想を得て、少し奇妙な物語を絵画に展開したとき、「物語以上の物語を鑑賞者に想像してほしい」と話す岩崎。鑑賞者は、絵画のなかで起きていることと、外側の現実空間との違いを感じながら、絵画の可能性を感じてみてください。

 

 

《夜》(2023)

 

《鉢島》(2023)

 

《果樹》(2023)

 

《素敵な部屋》(2023)

 

《しずかな魚》(2023)

 

 

プロフィール

岩崎奏波

1996年沖縄県生まれ。2022年多摩美術大学大学院 美術研究科博士前期課程絵画専攻油画研究領域修了。記憶はどう変化し、残されるのか。時間はどう流れているのか、または本当に流れていくものなのか。物語を絵によって語るとき、私と鑑賞者、作品に何が起こるのか。私と、私以外の境界線と共通項は何か。絵を描くことで、絵画空間と自身の存在する空間がどのように異なり、またはつながっているのかを確かめ、絵画という空間が可能にすることを探りながら制作をしている。主な個展に、「7本足で夢をみる」(下北沢アーツ、東京、2022)、「いま かんがえた ストーリー」(Room_412、東京、2022)、「プレイ パーク」(フリュウギャラリー、東京、2022)、「on the cave」(Room_412、東京、2021)、「anima」(フリュウギャラリー、東京、2021)、主なグループ展・アートフェアに、「IN THE LOOP」(THE LOOP GALLERY、東京、2022)、「3331ART FAIR」(3331アーツ千代田、東京、2022)など。