鈴木一世は、「混在」をテーマに特徴的な曲線を描き、記憶や情報の断片がうごめき合う様子を鮮やかな色彩で表現します。その独特な形状と色彩により、鑑賞者はサイケデリックな印象を持ち、60年代に「アンダーグラウンド」と呼ばれたシーンの熱気や混沌が現代アートへと昇華されてきたように感じるかもしれません。
鈴木は、作品のなかでは曲線を好んで取り入れますが、その理由は「どんなことにおいても多様的なものの見方を感じられるから」と話します。「曲線という視覚的な美しさはもちろんのこと、曲線から想起される考え方に惹かれる」と話す鈴木。例えば、直線は少しでも曲がったら直線ではなくなるため「間違い」となりますが、曲線は「どう曲がっても曲線」、どのかたちも「正解」ととらえられます。そして、それは価値観や社会における属性など、あらゆることに置き換えられると考え、自身の絵画のなかで多様な価値観を尊重することを曲線で表現するようになりました。
いっぽうで、日常生活においては直線的な表現や、シンプルなものを好むという鈴木。「なぜか自分の趣味、嗜好と対義的なものが作品には表現される。もしかしたら、作品を通して現れたものが『真実』かもしれない」と話します。鈴木は近年、「自由」について考察を続けています。「『自由』とは、規制のなかで生まれ、名づけられたもののように思う。制限がなくなった『自由』は混沌であり、もし人間がそれを手に入れたら、困惑するのではないか」と話します。例えば、大人たちが仕事終わりに飲む酒を美味しいと感じることは、ある程度の規制や抑圧に一種の心地良さを感じ、そのなかでの自由を享受する、わかりやすい一例かもしれません。鈴木は、制作する絵画にも構成要素を制限するなど独自にルールを設け、自身の考察を絵画に落とし込み表現します。
「混沌」は「秩序」があるからこそ生まれることを想起させる鈴木の絵画。存在しないかもしれない「自由」を求める気持ちのうごめきを感じながら、鈴木は表現における真実とは何か、追求を続けます。
《fusion ⅩⅩⅩⅡ》
《fusion ⅩⅩⅩⅢ》
《expression》
プロフィ―ル
鈴木一世
2001年生まれ、仙台市出身。2018年高校在学中に初個展。その後の主な個展に、「VEGALTA SENDAI 25th ISSEI SUZUKI EXHIBITION」(仙台ユアテックスタジアム、宮城、2019)、「Diversity」(roidworksgallery、東京、2021)、「Issei Suzuki Exhibition supported by adidas」(銀座 蔦屋書店、東京、阪急メンズ大阪Contemporary Art Gallely、大阪、2022)、「alive」(roidworksgallery、東京、2023)、「punctuation」(銀座 蔦屋書店、東京、2023)、 グループ展に、「現代芸術家たちの表現展」(土のミュージアム SHIDO、兵庫、2023)、「AaP2023」(roidworksgallery、東京) など多数。その他、Monkey MajikのBlaise Plantの醸造によるワインのラベルデザイン担当(2019、2022、2023)、BSフジ『ブレイク前夜~次世代の芸術家たち~』出演(2020)、香川県のレザーブランドTIDEとのプロジェクト「ARTIDE」に参加、文化庁による音楽とアートの融合による新プロジェクト「MICUSRAT -Loves music and art-」に参加、SUMMER SONIC 大阪に大型作品の展示(2023)など、多方面で活躍する。
Information
「ART FAIR ASIA FUKUOKA 2023」 会期:2023年9月22日〜9月24日
「Art and Pulse in OSAKA」 会期:2023年10月4日〜10月16日
鈴木一世個展「oxymorons」 会期:2023年10月21日~11月26日 |