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高木真希人の作品販売がスタート。ユニークなキャラクターに隠された図像の美の追求

OIL by 美術手帖がおすすめのアーティストを紹介していく「OIL SELECTION」。今回は、高木真希人です。現在、Moosey Artで開催中の個展「What Is The Smallest Unit In Art ?」にあわせて、作品を出品いたします。

文・構成=髙内絵理(OIL by 美術手帖)

高木真希人 FARO Kagurazakaにて

 高木真希人は、ユニークなキャラクターを用いて、図像の美しさを様々なテーマで表現しています。キャッチ―な作風が誕生したのは、学生時代にさかのぼります。「グラフィックデザインが特徴的で、 本自体が作品かのように思った」と語る『STUDIO VOICE』など雑誌の影響を受け、当初はグラフィックデザインやイラストレーションに興味のあった高木。大学進学を機に美術への好奇心が高まり、油画の制作に取り組みます。当時、タイの映画ポスターに見られるイラストレーションのリアルさや、「甘い色味」の感じを好んだ高木。そのポスターのような表現を試みたことがきっかけで、自身の「snap-shot」シリーズ(暗闇の中でフラッシュを使ってカメラで偶然撮影されたように描かれた生物を描く)とあわせて表現に落とし込んだときに、自分の目指す表現には油絵具よりアクリル絵具のほうが相性が良いことに気づきます。以降、アクリル絵具を用いて現象をよりリアルに見せる表現を追求するようになりました。

 ポップな印象が強い高木の作品は、自身の考える「ポップ」さは、幼少期のあるエピソードの影響が大きいと話します。高木が小学生の頃、ミニ四駆をもとにしたマンガが流行していたこともあって、父親にミニ四駆をねだったところ、工業高校の教師であった父親から「TAMIYAが出しているもっと良いものがある」と、工作セットを提案されたと言います。それは、完成するとモーターと木とタイヤのみが付いた車の「素組み」ができあがるというもの。その当時はわからなかったが、マンガを通して知ったミニ四駆の源流は、TAMIYAの工作セットのように、まずかたちや組み合わせの美しさであること。そこにアプローチのしかたや技法など複数のレイヤーが重なって生まれるものが作品と考えると、「表現の本質を感じた」と話します。高木はシンプルな変換の仕方で鑑賞者に伝わる「ポップ」な表現の追求を続けます。

 初のロンドンでの個展では、これまでのシリーズを一堂に集めて発表。「日本では、海外作家が描いたようだと言われることが多いが、逆に、海外では『非常に日本的』と言われると聞いている。その真意も確かめてみたい」と話す高木。「OIL by 美術手帖」では、父親から影響を受け、自身も好む電子機器がモチーフの作品を2点発表。幼少期のエピソードもあわせて、かたちや構図の美しさにご注目ください。

 

 

《Computer like calculator chang-FUJI》(2023)

 

《SWITCHER-RED》(2023)

 

《A kite and remover on glass》(2023)

 

《Baloon with Troll Doll installed》(2023)

 

 

プロフィール

高木真希人

2010年多摩美術大学絵画学科卒業、11年まで表現集団「オル太」に在籍。美術大学在学中より描き続けている、暗闇の中でフラッシュを使ってカメラで偶然撮影されたように描かれたクリーチャーたちを描く「snap-shot」シリーズ、月のように他からの光を浴びるモチーフを描き出す「moon-shot」シリーズ、植物の部位をクリーチャーに見たてる「Nice corm」シリーズ、キャラクター化され、積み重ねられた箱、缶、金属、機械などを描く「stack」シリーズなどがある。近年の主な個展に、「What Is The Smallest Unit In Art ?」(Moosey Art、ロンドン、2023)、「SATA ANDAGI」(FARO Kagurazaka、東京、2023)、「Suggesting the Possibility of Art as Time Travel」(FARO Kagurazaka、東京、2022)、「Ocular dreams、painting nights.」(六本木蔦屋書店、東京、2021)。主なグループ展に、「WAVE: Currents in Japanese Graphic Arts」(Japan House London、ロンドン、2023)、「SUMMER MIX VOL.1」(TUESDAY TO FRIDAY、バレンシア、2023)、「GROUP EXHIBITION — CHRONICLES VOL 5」(Galerie Droste、ベルリン、2022)、「PSYCHE」(Gallery & Shop Marco、大阪、2022)、「Universes 4」(Galerie Droste、パリ、2021)、「GROUP SHOW」(FARO Kagurazaka、東京、2021)、「NICE GUYS LIVE FOREVER」(Moosey Art、ロンドン、2021)など。

Information

高木真希人個展「What Is The Smallest Unit In Art?」

会期:2023年9月2日~24日
会場:Moosey Art
住所:22-24 Camden Passage Islington London N1 8ED
開館時間:11:00~17:00(GMT) 
休館日:月、火、水
料金:無料