守山友一朗は、日常や旅先で目にした一場面から、感覚的で瞬間的な印象をとらえ、喚起力に満ちた作品を描いています。守山は西洋文化を好んだ両親の影響で、幼少期より西洋的な生活様式が身近にあるなかで過ごし、とくに冒険好きの父親と一緒に山や海へ出かけ、「『絵になる』ような場面をたくさん見たことが原体験としてある」と話します。美術の道を志したときにも、海外を学びの場所として自然に選び、とくにフランスの雰囲気や美術に「軽やか」な魅力を感じた守山は、2005年に渡仏して美術を学びます。
守山が身近な風景を描くのは、自分の体験や「眼」で見た等身大の像を描きたいという思いがあります。制作の方向性に悩んでいた26歳の頃、大学の教授からの助言で、自身の作風はコンセプトやテーマを掲げてテキストになりえるようなものではなく、線やマチエール同士の組み合わせや構図で抒情的なビジュアルを生み出すものであることに気づきました。自身の思想を語るのではなく、自身が純粋に美しいと感じる図像に向き合い、正直かつ精細に表現した絵画は「結果的に自身のオリジナリティとなった」と話す守山。「軽やか」な筆致で「フラット」に描かれているからこそ、その風景は鑑賞者にそれぞれの体験や記憶を喚起させるのかもしれません。
今回の展示では、今年の6月にヨーロッパを旅した際に目にした風景を中心に描き、自分の視点次第で、目の前の空間から「かたち」の存在をとらえるというアプローチを発表。オンラインでは、守山が通ったパリの劇場での上階席からの視点と、舞台上の人物配置の構図から着想した「舞台」を題材としたシリーズから《Dancers in Blue Costumes》(2021)をご紹介します。舞台への着眼は守山を象徴する、輝く水面を描いた「Jeux d’eau」シリーズとも深い関わりがあります。守山は旅でヴァチカン美術館を訪れた際、「地図の間」に飾られた16世紀の地中海の大きな地図を目にしました。海を真上から見下ろした視点でとらえた画面づくりに着想を得た守山はその後、休暇で訪れた南仏の海を見て、海を舞台に見立てることを思いつくのです。上から見下ろした海を舞台とし、水面に輝く光を装飾に、そして水浴する人々をダンサーのイメージで配置することで、まったく別のイメージで海をとらえました。「絵画に現すモチーフをまったく違うところから持ってきたイメージでとらえることは多い」と話す守山は、日常や旅先の風景から着想を得ながら、自身の追求を続けていきます。
《Birds on Old Lace》(2021)
《Dancers in Blue Costumes》(2021)
《Feuille morte jaune》(2017)
《Swan over Branches》(2019)
プロフィ―ル
守山友一朗
1984年熊本県生まれ。2005年に渡仏し、パリのエコール・デ・ボザールで、ジャン=ミシェル・アルベロラに師事。12年に同学校を修了。その後もパリを拠点に活動を続け、18年に帰国。現在は東京を拠点に活動している。主な個展に「Illuminate 」(SCÈNE、東京、2022)、「Project N80 MORIYAMA Yuichiro」(東京オペラシティアートギャラリー、東京、2020)、「Etoiles et Brise−星とそよ風- 」(SCÈNE、東京、2019)、「Try to remember」 (Green flowers art gallery、フランス、2016)、グループ展に「部屋のみる夢−ボナールからティルマンス、現代の作家まで−」(ポーラ美術館、神奈川、2023)、「海と椅子-the Chairs, by the Sea 」(Scène、東京、2022)、「touch the light 」(日本橋三越コンテンポラリーギャラリー、東京、2022)など。
Information
守山友一朗「Shapes of Memories」
会期:2023年10月18日〜10月30日 |