額賀苑子の作品販売がスタート。不確かさや脆さを掌握する彫刻で本質を問う
OIL by 美術手帖がおすすめのアーティストを紹介していく「OIL SELECTION」。今回は、額賀苑子です。自身の代表的なシリーズから近年、新たに取り組む金彩を使用した作品のシリーズまで、それぞれ作品を出品いたします。
文・構成=髙内絵理(OIL by 美術手帖)
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額賀苑子は、存在や知覚の不確かさに着目し、人物をモチーフとした歪みや抜けのある彫刻作品を中心に発表しています。当初は絵画専攻を考えていた額賀は、大学の卒業展示を見に行った際に初めて現代彫刻と対峙。自身の考えを立体として同じ地平線上に表現できることに衝撃を受けて、自身の表現に彫刻というメディアを選択しました。
額賀は、彫刻の魅力を「影や吐息を描くことはできないが、彫刻はそれを物質として、ないものを存在させることが可能であること」と語ります。額賀の代表的なシリーズに、眼鏡や手鏡をモチーフにしたシリーズがあります。これは、彫刻における絵画的な展開を試みたものです。彫刻作品は置かれた場所が背景となるため、どこにでも存在できるという点では自由だが、「孤独」でもあると感じる額賀。例えば風景画を通して、鑑賞者と同じ景色を共有できるのに対し、「景色を持たない彫刻作品は、鑑賞者と交わることができないように思った」と話します。そこから着想し、彫刻のなかに背景をつくり出す本シリーズでは、眼鏡に映り込む人物や景色を描くことで鑑賞者も同じ人物や景色を見ている状況を生み出し、風景画を鑑賞するときの感覚と同様の感覚を彫刻に対峙する際にもつくり出すことを試みています。
また、額賀は、彫刻と空間の関係について「空間に彫刻があると、彫刻の周りの空間の形態は、彫刻により歪み、欠けた状態に造形される。さらに自分がその空間を歩くことでまた複雑に造形されていくという面白さがある」と話します。環境を取り込んでいくような、自身を超えた予定調和ではない表現を大事にする額賀は、近年、取り扱いの難しい金彩を技法に取り入れるなど新たな展開も試みています。
今回は、額賀が取り組んでいるという金彩を使用した立体作品、自身の代表的なシリーズである眼鏡をモチーフにした立体作品、習作や、アイデアを醸成させるために制作するという陶の小作品もご紹介。何をもって「彫刻」とするのか、どこからが「彫刻」と言えるのか。額賀からの提示を契機に、考えをめぐらせてみてください。
《眼鏡のパン》(2023)
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《イルカ》(2023)
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《B》(2023)
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《D》(2023)
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プロフィ―ル
額賀苑子
1989年神奈川県生まれ。2013年東京藝術大学美術学部彫刻科卒業、15年同大学大学院美術研究科彫刻専攻修士課程卒業。現在、東京を中心に活動中。陶やテラコッタを主な素材として用い、実体と表層、意識と無意識、ペルソナとアニマなど相対する2つの価値観に着目し、人間が誰しも抱える矛盾やズレを普遍的な人体というモチーフに落とし込み、作品を制作している。
Information
ブレイク前夜展in金沢「秋元雄史セレクション~ブレイク前夜」 会期:11月18日〜12月24日(後期)
「My relax time~彩りとぬくもりを」 会期:2023年12月8日~12月24日(Vol.2) |
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