太田桃香は、自身の生活や日常をテーマとした作品を発表しています。作風を意識的に変えることはせず、「季節の変化や、環境からの影響を絵に反映する」と話す太田。自身に起きる変化に自然に呼応するように追求を続けています。
太田の代表的なモチーフである「山」が生まれた背景も、大学時代を過ごした京都の街並みが影響しています。中心部でも山が見える京都の街並みを歩くのが好きだったという太田は「散歩をしながらモチーフを見つけてはドローイングしていた」と話し、日常生活のなかに「山」が自然に入り込んでいたことから、描くことが多くなっていきました。その後、大学院進学に伴い愛知へ拠点を移してからは、コロナの影響で外出が制限されたこともあり、モチーフは山から自身の身近にあるものへと変化していきます。
ユニークな作品タイトルには、そのときの状況がよく反映されています。山をモチーフに描いていたときは「ダンス」という言葉をよく題に付していた太田。山を見て、心が躍り、絵を描くというような生活のルーティンは、生活というリズムを踏んでいるという意味で、まるで「ダンス」のようだと感じた太田。現在は、単純で規則的な手の動きの「リズム」や、音楽を聴いて自然と「リズム」をとり描くときの体感も制作に落とし込む太田。山を描きながらも、そこには生活のなかで生まれる音や、身体の動き、瞬間の心の動きも表現しています。
今回の展示では、「ふれられない」ものから着想を得て制作する3名の作家(太田桃香、久保木要、中村百花)が集結。オンラインでは、太田が季節の変わり目に感じたこと、例えばアトリエまでの道すがら感じた金木犀の香りや、日中の日差しのやわらかい雰囲気など、日常生活のなかで「ふれられない」ものを作品に落とし込んだ新作を発表します。
《走っている》(2023)
《楽譜を読む》(2023)
《お気に入り紹介》(2023)
《カーテン揺れる(冬色)》(2023)
プロフィ―ル
太田桃香
1997年静岡県生まれ。2020年京都造形芸術大学(現 京都芸術大学)美術工芸学科油画コース卒業。22年愛知県立芸術大学大学院美術研究科(博士前期)美術専攻油画・版画領域修了。22年スタジオ航大所属。山をはじめ、自身の生活や日常を題材とした作品を制作する。主な個展に、「太田桃香 作品展」(銀座 蔦屋書店、東京、2022)、「太田桃香 FUGA Dining Collaboration Exhibition」(FUGA Dining、東京、2021)、「生活ダンス」(ZINE gallery、京都、2021)、グループ展に、「Focus the STUDIO KODAI」(アートかビーフンか白厨、東京、2023)、「ABSTRACTION THE REALITY」(GALLERY HAYASHI+ART BRIDGE、東京、2023)、「WHAT CAFE EXHIBITION vol.24」(WHAT CAFE、東京、2023)、「愛知県立芸術大学卒業・修了制作展 木木木(もり)の卒展」(愛知県立芸術大学、2022)、「アートとTシャツと私」(haku kyoto、京都、2021)、「KUAD ANNUAL2020 フィールドワーク 世界の教科書としての現代アート」(東京都美術館)など。ARTISTS' FAIR KYOTO(2021)、コンテンポラリーアートフェア「Game Changer」(2021)に参加。
Information
太田桃香、久保木要、中村百花 3人展「フローな風景」
会期:2023年11月17日~12月5日 |