佐藤絵莉香は、自身が見た景色、すれ違った物事、その時に起きた摩擦熱のようなものを起点にし、少しの寂しさとユーモアを織り交ぜて描くアーティストです。このたび、長亭GALLERYでは、佐藤絵莉香による個展「Home ground」を開催します。会期にあわせ、「OIL by 美術手帖」でも出展作を販売いたします。
ステイトメント
人は環境に左右される生き物だと思う。少なくとも私は、環境にとても神経を使ってしまうほうだ。地元の環境が自分に影響を与えている感覚がなんとなくあり、私は生まれてからずっと川崎で生活をしている。父親は川崎の工場で働いて灼熱の中で鉄をつくり、小さな頃に亡くなった祖父は競馬が好きで川崎に引っ越してきた。この地元に切っても切れない縁を感じずにはいられなかった。駅前の駐輪場には日に日にスプレーの落書きが増えていて、家の近くを流れる2つの大きな川は真っ黒く淀んでうねっている。工場地帯は365日年中無休で煙突から煙と火を吐いて、冷たい光を放っている。この街はどこか殺伐とした雰囲気で、とても穏やかで綺麗な街とは言えないだろう。しかし、私にとっては好奇心と安堵を与えてくれて、その些細な風景の肌理がキラキラと輝いて見えた。暗い街の雰囲気に飲み込まれてしまわないように、描く絵はユーモアと豊かさを讃えて存在していてほしい。様々なものや、たくさんの人で溢れかえる窮屈な街の日常をせめて絵の中では臆することなく、のびのびと描きたいと願う。街の絵を描くことは、画面上で街のなかで自分の思考が対峙して、街の中で自分の居場所を探る行為なのかもしれない。
《Island Horse》(2024)
《TIME》(2024)
《リバーサイドッグ》(2024)
《KEIHIN》(2024)
長亭GALLERY
長亭GALLERYは2020年7月に東京・東日本橋にオープン。株式会社FelisCatusが運営するギャラリー。 日本と中国のアーティスト、デザイナー、学生を招いて作品の展示や交流会を行う。アートを媒介にする多様な価値観を発信し、新たな社会性の創造、地域活性化や現地の住民、鑑賞者らのあいだでアートを媒介とした新しいコミュニケーションを生み出すことを目指す。 現代美術を中心に、絵画、デザイン、写真、工芸、幅広いジャンルの作家の個展や企画展、様々なイベントを開催する。
Artist Profile
佐藤絵莉香
佐藤絵莉香は1996年神奈川県生まれ。2020年武蔵野美術大学造形学部油絵学科油絵専攻卒業、21年武蔵野美術大学大学院造形研究科修士課程美術専攻油絵コース在籍。自身が見た景色、すれ違った物事、その時に起きた摩擦熱のようなものを起点にし、少しの寂しさとユーモアを織り交ぜて描く。主な個展に、 「えのぐぬりとサテライト」(gallery TOWED、東京、2020)、グループ展に、「Collectors'Collective 1」(MEDEL GALLERY SHU、東京、2019)、「SHIBUYA STYLE vol.14」(西武渋谷店、東京、2020)、「イケセイスタイル」(西武池袋店、東京、2021)、 「Hazy memories―曖昧な記憶―」(そごう横浜店、神奈川、2021)など。
Information
佐藤絵莉香個展「Home ground」
会期:2024年3月23日~4月7日 |