11月28日から12月1日にわたり、東京都現代美術館で開催される第14回「TOKYO ART BOOK FAIR」(以下、TABF)。国内外から約300組の独創的なアートブックを制作する出版社、ギャラリー、アーティストらが集結し、作り手たちが本の魅力を伝えます。
会期中は、ひとつの国や地域に焦点を当て出版文化を紹介する企画「ゲストカントリー」や、東京都現代美術館で12月21日より開催される展覧会「坂本龍一 | 音を視る 時を聴く」に先駆けた「坂本図書分室」による図書にまつわる展示のほか、New Balance、花椿、BEAMS CULTUART、THREEによるスペシャルブースも登場。さらに、トークショーやワークショップ、サイン会、ライブパフォーマンス、地域連動企画「ネイバーズ」など多様なプログラムが展開されます。
ゲストカントリー:ドイツ
今年で8回目を迎える企画「ゲストカントリー」はドイツを特集。本企画では毎年、ひとつの国や地域に焦点を当て出版文化を紹介しています。1450年代にグーテンベルク印刷機が誕生し、高い印刷技術や真摯なものづくりを誇る同国は、現代アートの豊かな土壌があり、革新的な表現やカルチャー、多様なコミュニティを寛容に受け入れてきました。本展では複数の展示を通して、決して一括りにはできない、多様性に富んだドイツのアート出版の状況を紹介しています。
また、日本でも高い人気を博すアーティストのステファン・マルクスやベルリンのアートブックフェア「MISS READ」、老舗出版社「Verlag der Buchhandlung Walther und Franz König」、世界一美しい本を作ると謳われる「Steidl」など、ドイツのアート出版を牽引する多様なブックメイカーたちを紐解く展示も開催。
「OIL by 美術手帖」では、本展にあわせて刊行された書籍やトートバックなどを販売をします。
『ステファン・マルクス アーティストブック大全 2003-2024』
定期的にアーティストブックを刊行し、アートブックフェアにも積極的に参加するなど、国際的なインディペンデント出版において重要なアーティストのひとり、ステファン・マルクス。
彼の優れた観察力によって日常生活を切り取ったユーモアのある知的なドローイングや言葉は、本やキャンバス、ビルボード、スケートボード、Tシャツ、レコードカバーなど多様なメディアを介して広く知られ、世界中の人たちを魅了しています。
これまでに彼が手がけたアーティストブックの表紙を時系列に全て掲載した一冊が、TABFでの展示「Die Hefte」にあわせて刊行。「Die Hefte」は、ドイツ語で「小冊子」を意味し、一堂に集められたコレクションを通して、彼の自由で遊び心あふれる表現の世界を感じるとともに、本というメディアの多様な表現の可能性を垣間見ることができるでしょう。
『出版のマニフェストの出版』
年に1回ベルリンで開催される「MISS READ: The Berlin Art Book Fair & Festival」の創始者であり現ディレクターでもあるミハリス・ピヒラーによる著作の日本語版。ピヒラーが序文として執筆したエッセイでは、出版を芸術的かつ政治的な実践としてとらえ、インディペンデント出版の経済、公共の場としてのブックフェア、ポストデジタル出版など、近年注目を集めるアートブックシーンの背景を多角的に探っています。
日本版では、オリジナルのコンテンツに加え、平山昌尚へのインタビュー、『NEUTRAL COLORS』の加藤直徳と加納大輔、そしてアーティストのミヤギフトシらによる座談会が収録されており、日本の視点を織り交ぜた独自の内容となっています。
TABF 2024 x STEFAN MARX TOTE BAG
本展のプロジェクトの一つとして、ステファン・マルクスが描き下ろした作品がプリントされたトートバッグも販売。
アートブックを読むカエルのモチーフは、自身が2023年のTABFに参加した際、会場周辺で蛙のイラストをよく見かけたという東京・清澄白河の街の印象と、清澄庭園にある俳諧師 松尾芭蕉の句碑「古池や蛙飛びこむ水の音」からインスピレーションを得ています。カラーはグリーンと白の2色展開。
TOKYO ART BOOK FAIR
TOKYO ART BOOK FAIRは、2009年にスタートしたアート出版に特化した日本で初めてのブックフェア。年に一度のペースで開催し、個性豊かなアートブック、カタログ、アーティストブック、そしてZINEなどを出版するアーティストや出版社が一同に集結する場所として着実に成長し、アジアで最大規模のアートブックフェアとなっている。毎回、国内外の出版社やギャラリー、アーティストら約350組が出展、2万人以上の方に来場。先進的なブックメイキングを続けるアーティストや出版社が作る魅力的な出版物で彩られたブースのほか、特別展、トーク、スクリーニングなどさまざまなイベントを会期中に開催。アジアにおけるアートブック文化を牽引するフェアになることを目指し、ユニークな進化を続けるアートブックの世界観を体感することができる機会を創出している。
Artist Profile
ステファン・マルクス
1979年生まれ。現代アーティスト。音楽やZINE、旅、サブカルチャーから多くの影響を受けており、シンプルでありながらも表現力豊かな線描画や手書きの文字などの作品は、鋭い観察力で私たちの生活をユーモラスに切り取る。アーティストブック文化との関わりも深く、多くのアーティストブックやZINEを出版社から刊行するだけでなく、自費出版も手がけている。コム デ ギャルソンやThe Ennoy Professionalなどのファッションブランド、ミュージシャンやレコードレーベルとのコラボレーションも行う。マルクスの作品はギャラリーやアートフェアなどでも展示されており、アート、ポップカルチャー、ユースカルチャーを融合する影響力のある人物。
ミハリス・ピヒラー
コマーシャルギャラリーのシステムから独立して活動するアーティスト。「Miss Read」と「Conceptual Poetics Day」の創設者兼ディレクター。本の形態をした作品を数多く出版している。キャンバスをアート作品のページとして 用いたり、それとは逆に本のページをキャンバスに見立てたりするほか、「Objet perdu(失くし物)」や両面コラージュといった 技法を考案した。近年共編した書籍に『Decolonizing Art Book Fairs』(Afrikadaa/Mosaiques/Miss Read、2021)や『WAVES: Radio as collective Imagination』(Miss Read、2024)、編集を手がけた書籍に『IDEA POLL』(Miss Read、2021)や『Coup de Dés(Collection)』(Spector Books/CBA、2024)などがある。またモノグラフがSpector BooksとPrinted Matter, Inc. より共同出版された。
Information
「TOKYO ART BOOK FAIR 2024」
会期:2024年11月28日~12月1日 |