Bong Sadhuの作品販売がスタート。「Dub」を編集思想として実践する
OILがおすすめのアーティストを紹介していく「OIL SELECTION」。今回は、Bong Sadhuです。OIL by 美術手帖ギャラリーでの個展「dub non dub展」の開催にあわせて、その全出品作を「OIL SELECTION」として紹介いたします。
文・構成=髙内絵理(OIL)

Bong Sadhuは、ペインター・金田大巧と写真家・百野幹人によるアーティスト・ラン・パブリッシャーです。2019年頃に出会い、共通の友人たちと旅へ赴いたりライブイベントで会うなど、友人として時間をともにしていたふたり。当時、スケートボードやBMXなどストリートから生まれたカルチャーが身近にあった金田と、スナップ写真から写真表現に興味を持ち始めた百野。ふたりに共通していたのは、彼らが生まれる以前に創刊した雑誌や書籍を好み、影響を受けていたことでした。21年に「自分たちでプラットフォームをつくりアートブックフェアに出てみよう」とふたりが共鳴し、Bong Sadhuとして活動がスタート。その後、22年に参加した「TOKYO ART BOOK FAIR」を端緒に、世界各国のアートブックフェアに出店、旅を続けています。
アーティストであり、パブリッシャーでもある金田と百野。自身らが発表するときには演者に、作家を招聘するときは黒子に、とスタンスも自在に行き来します。また、彼らは広義にとらえた「編集」的な視点を、本展にも冠した音楽のジャンル「Dub」という用語に反映しています。本展「dub non dub展」は、百野が撮影した写真作品に、金田がペイントなどの加工を施した共同制作を書籍化するプロジェクト。新たに再構築して、それを編むことは、もとの素材にアレンジを加えて新たなイメージを創出する「Dub」とも言えるでしょう。また、作家を招聘して制作を行う際は、自由を感じてもらえる環境を整え、その作家と「ジャムセッション」する感覚で自身らの制作も新たな表現創出の契機を得る。そうした過程も「Dub」と解釈し、作家をフォローアップするとともに自身らもアップデートしていきます。
2000年代生まれのデジタルネイティブ世代ですが、対面でのコミュニケーションに最大の価値を感じている金田と百野。本プロジェクトは、作品を通してふたりのあいだで行われた地球に向けての対話を「まだ皆が気づいていない表現以前の感覚や見落とされがちな価値を見つけて、シェアしたい」と鑑賞者に投げかけます。そして、自分たちの活動が、誰かの自由をつくる契機となることが希望です。例えば、鑑賞者が何か行動する契機となったり、表現活動を通して呼応してくれることなど。25年4月には、ゆかりある片瀬江ノ島に、世界中のアートブックを取り扱うギャラリースペース「Bong Sadhu Room」をオープン。相手とその場で直接コミュニケーションが取れる機会の創出に努めています。
「Sadhu」とは、ヒンドゥー教やジャイナ教における、俗世を捨て「解脱」を目指して修行する行者(苦行僧)の総称。ミニマルな洗練さや西洋的な思想よりも、土着的なものや東洋哲学の思想を好む金田と百野は、あらゆる物質的、世俗的所有を放棄しひとりで生きていくその姿に、インディペンデントかつオルタナティブの境地を感じ、屋号に冠しました。その精神を胸に、現代に生きる求道者としての旅は続きます。
《Sleeping DJ at Goa》(2025)
《Kinoha》(2025)
《Sadhu A》(2025)
《Bnana to Kinma》(2025)
Artist Profile
Bong Sadhu
湘南出身のアーティスト・金田大巧と百野幹人によるパブリッシング・プラットフォーム。「アウトサイドの視点」をテーマに作家を招聘し、広大な海や自然界に寄り添う生活、ライフスタイルや「遊び」を通して得られた独自の感性により出版や展示を展開。近年の展示に「dub non dub展」(INHERIT GALLERY BOOKS、homebody、fruit hotel、すべて2024)、出展に「TOKYO ART BOOK FAIR」(東京都現代美術館、2022~25)、「Printed Matter Art Book Fair」(ロサンゼルス、ニューヨーク)など。25年4月には、世界中のアートブックを取り扱うギャラリースペース「Bong Sadhu Room」を片瀬江ノ島にオープン。制作活動を通して地域外の人々も巻き込み、包括的で地域に根ざした表現活動を促進しようとしている。
Information
Bong Sadhu「dub non dub展」
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会期|2025年12月29日~2026年1月18日
■オープニングレセプション |




