安野谷昌穂の作品販売がスタート。風の声を聴きリズムを探し、問いには頓知を
OILがおすすめのアーティストを紹介していく「OIL SELECTION」。今回は、安野谷昌穂です。OIL by 美術手帖ギャラリーでの個展「Tempty Crowd Empty Cloud Service Everyday」の開催にあわせて、その全出品作を「OIL SELECTION」として紹介いたします。
文・構成=髙内絵理(OIL)

安野谷昌穂は、自然豊かな環境を拠点に制作を続けています。これは、安野谷の表現に見られる「循環」というテーマに影響を与えています。安野谷は、作品を通して世界への問いを投げかけています。安野谷にとって、表現することは生きること。生命の循環や、人間の目には見えない精神世界に関心を持つ安野谷は、表現と自分の心身との密接な結びつきも深く見つめています。何を口から取り入れて、どんな人と出会い関わっていくのか。すべてはぐるりとつながっており、自身に影響を与えます。たくさんの正義が存在する混沌とした時代のなかで自分のリズムが狂いそうになったとき、安野谷は自然の観察を通して自分の心に耳を澄ませ、「自分に集中する」と話します。ずっしりと太い幹が根を張るようにしっかりと呼吸を整えて「ビートを刻んで」いれば、自分の手が届く範囲以外にも「波紋」のように自然に広がって進んでいけると感じる安野谷。そうして安野谷は、日常生活や自身との対話を作品に昇華させ、「循環」させていきます。
生命の持つ力を眼差す安野谷にとって、いま、世界がどのように見えているのかを表現したのが本展「Tempty Crowd Empty Cloud Service Everyday」です。現在、我々はスマートフォンやPC画面の向こうに広がる、目には見えないどこか空虚な世界としてのクラウドサービスと切り離せない日々を送っています。目には見えない世界、というと日本には「八百万の神」という、あらゆる物事に神が宿るという概念がありますが、いまは、その空虚な世界のサービスを信仰しているようにも見えるかもしれません。まるで誘惑された人々がどんどん雲のようなつかみどころのない世界に吸収されていく様相を、安野谷は「拡張しているのに生命力が感じられない」と話します。今回、会場となるのは、大量生産された素敵な品々が購買意欲を刺激するように並ぶ百貨店。安野谷も同じく多数の作品を一堂に集結させますが、その「品々」は世界にひとつしかない、またはエディションが限られた「作品」です。安野谷は表現を限定せずに、その時々の表現にあった手法で発表を続けていますが、本展は原始的でシンプルな方法を好む安野谷をよく表す絵画やドローイング作品の発表となります。
本展では、ものや情報があふれ、誰かと自分を比べることも多い現代において、鑑賞者が日常のなかで少し立ち止まり、自分自身を見つめ直す時間を届けます。安野谷のプリミティブな作品群は、雲の上のほうにいってしまった感覚をお腹のあたりまで重心を下げて、地に足を着けて考えるような、都会の中心で「土」の存在を意識させてくれるかもしれません。安野谷からのユーモアを交えた「サービス」をお楽しみください。
《陽だまりの天使たち》(2025)
《Wrong Order Real Love Distance》(2026)
《Enter Fluffy Cloud》(2024)
《Gold Insight》(2026)
Artist Profile
安野谷昌穂
1991年兵庫県生まれ。京都精華大学でデザインを、オランダのヘリット・リートフェルト・アカデミーでファインアートを学ぶ。日常生活や自然の観察から得た情報や感覚をもとに、絵画やドローイング、コラージュ、パフォーマンス、詩、写真などで表現する。根源的な問いである「自分自身とは何か」「世界とは何か」を探求し、非言語的な領域での表現を追求する。描くという動作のほか、掻く、貼る、削るといった原初的な行為を通じて、即興的かつ身体的なアプローチで作品を制作する。ファッション、デザインの分野でも活動し、COMME des GARCONSやZUCCaなどとのコラボレーションワークを数多く手がけている。近年の個展に「LINALSASI」(Center for COSMIC WONDER、東京、2024)、「法天地在|POTENTIAL」(HARUKAITO by ISLAND、東京、2024-25)、グループ展に「Vong Co RAHZI(ボン コ ラージ)」(BLUM & POE、東京、2019)などがある。
Information
安野谷昌穂「Tempty Crowd Empty Cloud Service Everyday」
|
会期|2026年10月2日~10月25日 ■オープニングレセプション |
EVENT
ドローイング・セッション(10月2日、3日、9日、10日、11日)
-
会期にあわせ、対話から生まれる唯一無二のドローイング・セッションを開催します。お客様に描いて欲しいアイテムをお持ちいただき、一対一で会話をしながらその記録を線に記憶、その瞬間でしかなし得ない即興ドローイングをお届けいたします。セッションイベントチケットの購入はこちらから。
https://oil.bijutsutecho.com/search?q=MasahoAnotani_DrawingSession




