桑原正彦「heavenly peach」
1990年代の後半から一貫して、いま住んでいる環境に対する人間の欲望による変化に着目して作品を制作する桑原。進化、効率、大量生産など、60、70年代日本高度成長下の幼少期の思い出とともにある様々な変化を、奇妙な生物、ペットとしての動物、おもちゃ、風景、折込チラシの無名の女の子たちや建売住宅のイメージを通して作品にしています。
芳香剤のような、何かが終わった後に残っている微かな香りのイメージからタイトルがつけられた本個展「heavenly peach」では、現代への皮肉や空虚感はありつつも、決してつき放すわけではなく、愛情と優しさを込めた眼差しをもって表現された作品が並びます。
「OIL by 美術手帖」でも、桑原の作品を5点公開中。ぜひご覧ください。
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作家ステートメントより
今朝、光沢を失った表面が剥がれていた。改めて、それが化粧板であることを思い出す。魔法は耐用年数を終えて、わたしは14才になった。
嘘っぽい、というよりはこれが世界なのだと思う。わたしの背中には、嘗て、きれいな羽根があったはずだった。
山の手発、幸せの魔法。忙しく、疲れた現代人にときめきとヒーリングを。夢を叶え、仕事も、愛も、お金も手に入れてしまう。人脈拡大。大成功しているわたしが、この世の法則教えます。
疲れる。気候も不快。睡眠不足注意。愛 受け身 吉ラブ、結婚への夢消えず。通信よい
肛門近くの直腸には、カプサイシンの受容体がたくさんあるので、おしりが痛くなることも。
猿山での成功。名誉とか、金とか、アレとか。上位置にこびる中間層が自分より下の層をつくり、その位置を維持する。
注文から最短2時間でお届けします。
若い頃は旅行やさまざまな習い事など、何でもやりました。けれど、もうやりたい事がありません。ただ、仮面をつけ、自分は何のために生きているのでしょうか。
私は努力し国家資格を取得し、夫に頼らずとも暮らせる経済的自立を果たしています。夫が会社員であるということだけで保険料その他、多額の納税もせず、平然と生きている女性が許せません。
”本当の価値”とは何でしょうか。たくさん作って、たくさん買って、たくさん捨てる。無理に正しすぎる人たち。おいしい所だけの正統と異端。
わたしは、何を嫌悪しているのか、それがわかりません。
リーナをバックに入れて、表に出る。
長生をしたら、わたしもこの世界をゆっくりと味わえる日がくるだろうか。
それでもわたしは、世の中に溢れかえる性急で感情をあおる言葉に、いつも負けてしまう。
この、わたしがとても重荷。
平和とか、自由には手間と、それに耐えることの出来る実がとても大切なのだと本で読んだことがある。何かを考えているふりをしているわたしは、いよいよ試されることになった。
家電量販店の広い店内を散歩する。
もしかすると、わたしが知らないだけで、感情調整器とか、そんなのが既に売られているかも知れないし。わたしにも何とかなりそうな値段で。
”先端機器と身体の融合によって、人間観の変容、現実の意味内容を変えることも可能です。”
わたしは欲しい。そうゆうのが。不都合を考えずに済む装置。夢みたいな物語が。
フェアリー ハートチャーム。ピーチ リボン パレッタ。ムーンドロップ 羽根リング。
家に帰って、買ったものを並べてみる。
売場での輝きはそこになく、平らな空き地みたいだ。
片付けることにした。わたしはそこで静かな無意味になれるかも知れない。
しつこい汚れ。いやな、おさるさんみたいな、厄介なゴミ。バイバイ、さよなら。
白っぽいケーキみたいな家の前で笑っている子。あれは私かな。
整理収納。
街はとてもきれいだ。
桑原正彦
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Information
会期:2020年7月10日〜8月8日 |