◆静物画の果物の一つである檸檬をモチーフに、本作では色という不確かな存在の具現化・共有を試みる。
*本作に用いられている黄色顔料は、左より《lemon 5》ビスマスイエロー、《lemon 7》カドミウムイエローペール。
*2点組、各 33.3 x 22cm。

◆作家ステイトメントより：
山からの光線を遮った作業室の中で、レモンと10種類の黄色系顔料を用意してフレスコ画に取り組んだ。
レモンを黄色で描いては剥ぎ取り、顔料を混ぜたモルタルの上に重ねて貼り込んだ。
撮影のために12枚を格子状に展示して眺めると、個別では見えなかった、新しい全体像が浮かび上がってきた。
制作にグリッドを取り入れるようになってから、選んだ風景や物は全体像を保持したままパズルのピースのように分割される。
パズルだと気になるが、絵では描かずに消した部分や入れ替えた部分があることを許容している。
全体像を保持したままということが重要で、人が一瞬で認知できる全体の在り様に関心がある。

▪ Artist
吉岡千尋　 Chihiro Yoshioka
空を見上げ、地を見下ろすなどの身体経験と、画面に引いたグリッドを拠り所に、現実風景の中から印象的な光景を「模写」して一遍の詩のように描きだす。建築装飾や古典の絵画・修復技法も取り入れながら、触知し得ない無限の時空間や「見ること」を問いかける。