作品部分

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 水田寛は1982年大阪府に生まれ、2006年京都市立芸術大学美術学部を卒業、08年に京都市立芸術大学大学院美術研究科を修了。

 渋滞する道路や規則正しく並ぶマンションといった都市の風景を独自の描写力と色彩感覚で描き、「MOTアニュアル」(東京都現代美術館)、「VOCA展」(上野の森美術館)などのグループ展に参加するなど精力的に活動している。

 本作は、2017年の個展「鳴らない太鼓」(MEM、東京)への出品作。下塗りまでしたカンヴァスや過去に描いた作品を断裁し、縫い合わせたものを新しい木枠へと張る。縫い目が色と色の境界を作り出し、絵だった・絵になったかもしれないカンヴァスが集まり新しい絵が生まれる。作品タイトルは、完成した日にまつわる言葉によるもの。

 

アーティスト・ステートメント(2017)

 木枠に張ったばかりのキャンバスは、指で弾くと、太鼓のように良い音がする。しかし、そこに絵を描き始めると、筆圧や絵具の重さなどによりたるみが生じ、徐々に音は鈍くなっていく。この現象は、描けば描くほど失われるものがあるということをありのままに物語っているかのようだ。何かが絵になっていくとき、その何かは本来の性質や、存在感のようなものを失っていく。

 それら失われてゆくものをいかに残し生かすかが、絵画の勝負所ともいえる。キャンバスが絵でしかなくなってしまう前の、絵でもなくキャンバスでもない、あらゆる解釈から浮遊しているような魅力的な状態をどのように保つかは、良い作品をつくる上で大変重要となる。

 しかし、果たして描き手の着地点は、そこにしかないのだろうか。描きすぎること、失われすぎることにおびえながら、常に慎重でいなくてはならないのだろうか。私はむしろ、キャンバスが絵でしかなくなってしまった後、あるいは、キャンバスが木枠に張られる前、つまり描くという行程の外側にそうした絵にまつわる窮屈さを打ち破る手だてがないか探している。

 キャンバスが鳴らない太鼓になることを恐れずに絵を描く術があるとしたら、一体どんなものだろうか。

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水田寛

送り火のあと

2017

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 水田寛は1982年大阪府に生まれ、2006年京都市立芸術大学美術学部を卒業、08年に京都市立芸術大学大学院美術研究科を修了。

 渋滞する道路や規則正しく並ぶマンションといった都市の風景を独自の描写力と色彩感覚で描き、「MOTアニュアル」(東京都現代美術館)、「VOCA展」(上野の森美術館)などのグループ展に参加するなど精力的に活動している。

 本作は、2017年の個展「鳴らない太鼓」(MEM、東京)への出品作。下塗りまでしたカンヴァスや過去に描いた作品を断裁し、縫い合わせたものを新しい木枠へと張る。縫い目が色と色の境界を作り出し、絵だった・絵になったかもしれないカンヴァスが集まり新しい絵が生まれる。作品タイトルは、完成した日にまつわる言葉によるもの。

 

アーティスト・ステートメント(2017)

 木枠に張ったばかりのキャンバスは、指で弾くと、太鼓のように良い音がする。しかし、そこに絵を描き始めると、筆圧や絵具の重さなどによりたるみが生じ、徐々に音は鈍くなっていく。この現象は、描けば描くほど失われるものがあるということをありのままに物語っているかのようだ。何かが絵になっていくとき、その何かは本来の性質や、存在感のようなものを失っていく。

 それら失われてゆくものをいかに残し生かすかが、絵画の勝負所ともいえる。キャンバスが絵でしかなくなってしまう前の、絵でもなくキャンバスでもない、あらゆる解釈から浮遊しているような魅力的な状態をどのように保つかは、良い作品をつくる上で大変重要となる。

 しかし、果たして描き手の着地点は、そこにしかないのだろうか。描きすぎること、失われすぎることにおびえながら、常に慎重でいなくてはならないのだろうか。私はむしろ、キャンバスが絵でしかなくなってしまった後、あるいは、キャンバスが木枠に張られる前、つまり描くという行程の外側にそうした絵にまつわる窮屈さを打ち破る手だてがないか探している。

 キャンバスが鳴らない太鼓になることを恐れずに絵を描く術があるとしたら、一体どんなものだろうか。

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取り扱い MEM
サイズ 28.0 x 22.0 x 2.0 cm
素材 カンヴァスに油彩、糸
商品コード 1100003091
配送までの期間 さし箱付。ご注文後に箱を制作しますので、発送日時に関しては、ご購入者へ別途ご連絡いたします。
備考 額装をご希望の方は別途ご相談ください。
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