ケニヤ生まれのイギリス人陶芸家、マグダレン・オドゥンド（Magdalene Odundo）の作品集。2023年10月から2024年4月までトロントの「ジョージ R. ガーディナー陶磁器博物館（Gardiner Museum of Ceramic Art）」で開催された展覧会に伴い刊行された。

類まれなる才能を垣間見せる作者の作品は、その美しさと普遍性で高い評価を受けてきている。ギリシャ、中国、アステカ、アフリカなど、世界各地の伝統を通じて古典を研究してきており、その背景が、親しみやすくありながらも示唆に富む作品の造形によく表れている。キュレーターであり美術史家、陶芸家であるセコイア・ミラー（Sequoia Miller）は本書において、作者の陶芸作品に影響を与えている植民地時代の歴史と素材における伝統に光を当てる。作者が植民地独立後における経験を表現するために、いかにして文化的かつ民族誌学的資料を巧みに融合しているかを示している。

また、本書は多くの図版で作品を紹介するとともに、陶芸という形式と現代美術とを対話させ、作者の革新的な手法に関して論じている。この密な検証を行うことにより、版画やスケッチブックのドローイングといった紙上に描かれた作品を、これまでになく細部に至るまで見ることができ、それがいかに作者の創作活動において根本を成す側面であるか我々にはっきりと提示している。あわせて、作者に深く切り込んだQ&Aも掲載、アーティストとしての自己意識にまつわる作者の貴重な洞察も読むことができる。

同美術館のキュレーターであるスーザン・ジェフェリーズ（Susan Jefferies）による明晰な序文に始まり、研究者、編集者でありジャーナリストのネハル・エル・ハディ（Nehal El-Hadi）、キュレーターであり批評家、美術史研究者のエリザベス・ハーニー（Elizabeth Harney）、キュレーターであり美術史家のバーバラ・トンプソン（Barbara Thompson）らによる寄稿は作品の理解をより深めてくれる。本書は、この無二の才を持つアーティストに新たな視点をもたらし、作品が持つ奥深い複雑性を明らかにし、より広くモダニズムへの理解を深めてくれる。