韓国出身、ドイツと韓国を拠点に活動するアーティスト、ヤン・ヘギュ（Haegue Yang / 양혜규）の作品集。2019年11月から2020年4月までマイアミの「バス美術館（The Bass / Bass Museum of Art）」で開催された展覧会に伴い刊行された。作者は、歴史上の人物や出来事に関するリサーチと、民族的かつ伝統的な工芸技術の考え方に基づく考察から繋げた作品を生み出してきている。さまざまな形態や手法を用いた作品の多様性だけでなく、コンセプチュアルな抽象表現を用いた彫刻的言語は、その雄弁さに定評があり、多くの人を魅了してきた。過去10年間に制作されてきた新作を含む作品群を一堂に集めたこの展覧会では、一貫して作者が抱き続ける世界への好奇心と、「アイデンティティ政治」の複雑さや絶えず変化するそのパラメーターを具現化すべく行う根気強い実験の在りようを強く押し出して見せている。

ベネシャン・ブラインドを用いたインスタレーション作品や、擬人的表現、光の彫刻作品など、様々な媒体の作品が多く掲載されており、殊に、いまだ成長を続けている壁画のようなグラフィック作品においてはより焦点が当てられている。